部活を辞めた男女がゆるく仲良く放課後を過ごす――これも一つの部活青春のラブコメ

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMF文庫Jから9月25日に刊行された『どもども、部活やめた同盟です！』です。みなさんの感想も聞かせてください！

　高校時代の私は部活動をしていない、いわゆる「帰宅部員」でした。中学まではバレー部員として日々汗を流し、レギュラーとして活躍もしていたというのに続けたいとは思わなかった。疲れてしまったし、飽きてしまったし、自分の能力に限界を感じてしまったからです。

　部活に打ち込んでいること＝青春という風潮があったから（今もきっとありますよね？）、「帰宅部員」ということが恥ずかしかったのも事実です。でも同時に、体に鞭を打ったり、人間関係に悩んだりすることから解放されて、心は晴れ晴れ。放課後はカラオケやファストフードに行き、休日にはアルバイトも経験しました。振りかえってみると、帰宅部員なりにちゃんと青春していたんです。だから本作を読んだとき、ものすごく懐かしい気持ちになりました。

　サッカー部を辞めた咲良と、演劇部を辞めた美汐は「部活やめた同盟」なるものを結成。ルールも上下関係もなくただただ楽しいことをやる、そんなゆるい同盟（活動）です。放課後にラーメンを食べに行ったり、ショッピングモールを歩き回ったり。大人から見ればなんてことないことだけど、学生にとっては「リア充の極致」。しかも相手は、学年一の美少女なのですから、男子からしたら夢のようなシチュエーションですよね。美人の幼なじみも登場。咲良が美少女ふたりに振り回されるのを「かわいいやつめ」とニヤニヤしながら読みました。

　青春風味のラブコメとして楽しめるのはもちろん、やりたいことや居場所がないと感じている人の背中をそっと撫でてくれる、優しい作品であることも付け加えておきます。

文：高倉優子

ざっくり言うとこんな作品

１）部活をやめた男女ふたりが同盟を結成。放課後にラーメンを食べたり、徹夜でドラマを見たりとゆるく楽しく活動する。

２）友だち以上恋人未満のピュアな関係性がいい。クールビューティな幼なじみも参戦し、三角関係が勃発!?

３）基本、楽しいラブコメだけど、やりたいことや居場所がないと感じている若い世代に気づきと勇気を与えてくれる。

主要キャラ紹介

▼藍井咲良（あおい・さくら）

高校2年生。中学時代、サッカーの全国大会に出場。サッカー強豪高校に進学するが数ヵ月で部活を辞めてしまう。なぜか美汐に懐かれ「部活やめた同盟」を結成することに。

▼水瀬美汐（みなせ・みしお）

咲良のクラスメイトで、同じマンションに住む天真爛漫な「かわいい系」美少女。つい先日、演劇部を辞めたばかり。有名な芸能スクールに所属していた過去を持つ。

▼是枝紫子（これえだ・むらさきこ）

咲良の幼なじみでクラスメイト。落ち着いた雰囲気の持ち主で、高根の花という印象がある「美人系」。仲のいい友人からは「ゆかり」と呼ばれている。