【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファンタジア文庫から9月20日に刊行される『悪役家族 ~偽りの最凶親子は平和を愛す~』です。みなさんの感想も聞かせてください!
所属していた闇の組織が壊滅し、普通の日常に放り出されてしまった三人の最凶の能力者たちが、もしも“家族”になったら……? というお話。笑いあり、心温まる展開ありで、抜群に面白かったです!
子育てで最も大変であろう赤ちゃんのお世話や、親代わりとなった二人が家族になっていく過程、そんな6年もの月日を思い切ってカットすることで、1巻とは思えない、序盤からもう何冊もシリーズを読んできたような感触が味わえました。
持論ですが、いわゆる『家族もの』は読者がキャラクターに馴染んで、生活を想い描けるぐらいになってからが「美味しい」「面白い」と思っています。本作においては、この面白くなるまでの過程、トップスピードに乗るまでがものすごく早かった! この構成は英断ですわ……。
それでいて、全体に予定調和な印象があるかというとそんなこともなく。一冊を通して危機がジワジワと迫ってくる感じも見事ですし、要所で初々しいラブコメが見え隠れする様子もナイスでした。複数ジャンルのいいとこ取りにも成功していると言えそうです。

あとはやはり『フルメタル・パニック! アナザー』からの一作家ファンとして、その技量が遺憾なく発揮されているのが嬉しい! 本当にお見事でした。込み入った戦況が正面から格好よく描き切られていることは勿論、管理局のお役所仕事とか、ちょっとした世界観の描写が抜群に上手いですね。読みやすさを損ねない範囲でさりげなく「ここの施設がやっているのは闇の組織が遺したオーバーテクノロジーの民間転用で、問題が起きた時の所轄は~」とかが物語の端に描かれているわけですよ。この調子なら、語られていない部分もしっかり作り込まれているのだろうなぁと。土台がしっかりしている分、この先、何をやっても面白くなりそう。今後の展開も大変楽しみにしています!
文:中谷公彦
ざっくり言うとこんな作品
1)1巻でここまで熟した家族の様子が描けるのか! という驚きがある疑似家族もの。悪役の名前を冠しているものの、極端に倫理に反するような展開はなく、安心して楽しめます。
2)家族としての絆が深い一方で、異様に初心な夫婦の恋愛模様にも注目。ひとつ屋根の下で過ごしている男女の距離感としても、絶妙と言うほかありません。
3)軽快なアクションシーンは作者の本領発揮と言える流石の出来映え。心をくすぐる変身ヒーロー的な要素も満載で、日常ものが好きな人だけでなく、ヒーローものや特撮好きにもおすすめ。
主要キャラ紹介
アルフ
高度な科学技術力を有し「人類の進化・新たなるステージへの革新」を掲げて人知れず暗躍していた悪の秘密結社・ノア。その最終兵器とされた〈α〉の匣から現れた、出自不明の赤ん坊。

隅洲レナ
ノアの最高幹部として英才教育を受けてきたお嬢様であり、飛び抜けた能力を持つS級戦闘士。〈α〉を護る渦中に現れた赤ん坊から母と呼びかけられ、そのまま母親役を担うことになる。

上村ユウマ
悪の秘密結社・ノアにて、レナの護衛を務めていた孤高の戦闘士。レナと同様に、彼は父と呼びかけられた。精悍な印象で、組織内でも有数の武闘派だったが、家庭的な一面も併せ持つ。

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- コメディ・ギャグ
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- 現代
- 中谷公彦
関連書籍
-
悪役家族 偽りの最凶親子は平和を愛す=================
「フルメタ」スピンオフ
『フルメタル・パニック! アナザー』
著者 大黒尚人
TVアニメ化
『陰の実力者になりたくて!』
イラストレーター 東西
大注目のタッグが放つ新シリーズ!
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世界の暗部に潜み、その頂点に君臨してきた闇の組織――
秘密結社〈ノア〉は、その身から出た錆によって呆気なく壊滅した。
組織の最高幹部だった天才美女・隅洲レナ、
彼女の護衛を務めていた孤高の戦闘士・上村ユウマ、
そして、結社が最後まで秘匿し続けた最終兵器【α】
……だった少女・アルフ(究極の生体兵器)。
闇の組織から放り出された三人に下された『新たな指令』は……
“普通の家族”として平和に暮らすこと!?
最凶とも叫ばれる規格外な特殊能力を身体に宿しながらも、
それを(できるだけ)隠して、平穏な日常を送ろうと奮闘する、
《偽りの親子》が贈る、悪役×アクションストーリー!発売日: 2025/09/20ファンタジア文庫