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逆境から這い上がり、次代の王の座を勝ち取れ! 理不尽に抗い、少年少女が階級制度をぶち壊していく下剋上の学園ファンタジー‼

ファンタジア文庫
ファンタジア文庫
2025/09/19

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファンタジア文庫から9月20日に刊行される『暴君と成れ、バレンシア -王座争奪学園-』です。みなさんの感想も聞かせてください!


 生まれや育ちでなく、ただその人柄によって他者を惹きつける人物をカリスマと呼ぶのなら、本作の主人公・バレンシアはまさにそうでしょう。私も「彼女と友達になりたい」と思わずにはいられませんでした。
 本作は、王の後継者を決めるための学園という独特な舞台設定で描かれるファンタジーですが、何よりもキャラクターの思想というか人間性、あるいはその生き方そのものみたいなものがキラリと輝く一冊です。規格外の力で無双したり、敵をドンドン倒したりといった派手な活躍はありませんが、バレンシアが過酷な状況を一歩また一歩とゆっくり着実に打破していく姿には確かなカタルシスがあります。

 常に周囲から見下され、味方もほとんどいない状況下で、王座を目指す少女・バレンシア。その立場はいつ心が折れてもおかしくないものです。作品を読み始めた当初は「私なら耐えられないだろうな」と顔をしかめるほどでした。
 しかし彼女は卑屈になるどころか、今いる環境を楽しみ、敵対した相手とすらも友人になることをためらいません。状況を考えれば人一倍ネガティブな感情を溜め込んでいてもいいはずなのに、どうしてこんなことができるのだろうか。彼女が行動を起こすたび驚かされ、そして尊敬の念が湧き上がってきました。自分にできないことを易々とやってのける彼女が、私にはどうしようもなく眩しく見えました。作中で少しずつ増えていく仲間たちも、きっと同じ思いを抱いていたのではないでしょうか。

 どんな人でも、逆境に立たされれば心が荒みます。そんなときに他者を省みることがいかに難しいかは、私を含め多くの人が知っていることでしょう。だからこそバレンシアの懐の深さは、彼女固有の技以上に大きな、得がたい武器であるように思えてなりません。
 自分の境遇を哀れまず、人を恨まず、常に前を向く彼女の姿勢は、仲間たちだけでなく、日常の中でもがいている私たちをも勇気づけてくれます。「辛いと嘆く前に、今何ができるか考えてみよう」と、気持ちを奮い立たせてくれる物語でした。

文:安芸 沙織理

ざっくり言うとこんな作品

1)生い立ちゆえに蔑まれていたバレンシアが、彼女だけが持つスキルと人間的魅力で仲間を集め、のし上がっていく爽快感!  逆境に負けない彼女の逞しさに惹きつけられる。

2)綿密な設定に基づき多種多様な技が飛び交う魔法バトルは必見! バレンシアの「他者の魔法を使いこなし、自己流にアレンジする」技が、先の読めないワクワク感を掻き立てる。

3)民街出身のバレンシアは、何故王座を決める学園に入学できたのか? すべての真相が明かされたとき、物語の奥行きに驚かされる。何度も読み返したくなること間違いなし!

主要キャラ紹介

バレンシア=ファニー
貧民街出身の少女。魔法に関する知識は皆無だが、他者の魔法を即座に使いこなす術を自力で編み出した。おおらかで打たれ強く、周囲からの蔑みや嫌がらせにも動じない。

ヨビト=ロトス
カレッジ入学を機にバレンシアと行動を共にする少年。どんな時も冷静で、様々な面から彼女を補佐する。魔法で出現させた箱を自在に操ることで、戦闘もそれ以外も難なくこなす。

マロン=クライエイン
とある事件をきっかけに、バレンシアたちと知り合う少女。気が弱いところがあり自分を卑下しがちだが、実は追い詰められるほど魔法の精度が上がる。植物を操る魔法の使い手。

ユウレカ=サントリーニ
入学当初はバレンシアを敵視するも、後に仲間となる少女。素直になれないツンデレ気質だが、仲間には優しく、状況を見極める冷静さも持つ。炎を纏わせた足での蹴りが武器。

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  • 安芸 沙織理

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    水原 みずき (著者) / うなみや (イラスト)
    発売日: 2025/09/20
    ファンタジア文庫
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