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「デスゲーム」によるスリルと爽快感、そして骨太の人間模様。すべての魅力が詰まった後宮ファンタジー

富士見L文庫
富士見L文庫
2025/09/12

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は富士見L文庫から9月12日に刊行された 『百華死亡遊戯 冷遇妃の瞳は後宮の命花を映す』です。みなさんの感想も聞かせてください!


 後宮での地位争いは陰謀と策略がつきものだ。閉じ込められた世界で生き残りを図る。しかしあくまでもそれは社会的地位の争いであり、実際の生死を争うものではない。しかし明確に身体的死がもたらされる生存ゲームになったなら? それを読ませてくれるのがこの作品だ。

 「死相が見える」という能力はいろいろな作品に登場する。死相がみえるという能力を単純に死ぬか、死なないかの判定として使うだけでは不十分だ。確定した死相、その死相が消えたタイミング、死ぬかもしれないという曖昧な死相。この作品でも、死相の変化が生き残るために重要で、能力でチートするのではなく協力し推理し、知識を使う。ここまでは予想通り。

 一方デスゲーム+後宮設定ときいたとき、後宮が生き残り権力を争う舞台なのだからゲームという形で生死を白黒明確に単純化したんだろうと思っていた。死ぬべき政敵を排除して殺し、国を治める正しい人間が生きのびる。しかしこちらの予想とは違った。

 デスゲーム自体が国を司る器を測る試練であり、勝利はただ生きのびるだけでなく「政治的正しさの絶対的保障」になるのだ。なるほどと唸ってしまった。これは単純なゲームではない、政治的にも失敗が許されないゲームなのだ。後宮の力関係を背景とした敵役の立ち回りや駆け引きの巧みさにはもちろん、二重の意味で勝利が決まるという緊張感と切迫感にどきどきさせられた。予想以上のゲーム展開に読み応えばっちりの一冊だった。


文:仲村友巳

ざっくり言うとこんな作品

1)中華後宮を舞台に「デスゲーム」要素を加えると? 命を賭けた駆け引きにより、刺激的で緊張感溢れるスリルな異色の作品に!

2)自分の出自や異能を恥じてきたヒロインが一転。死から大切な人を守るため、自らの知識と能力を武器に生き抜く様が爽快!

3)きらびやかで優雅な後宮の雰囲気から陰謀渦巻く骨太の人間模様まで。確かな筆力で、絡み合う謎と嘘と罪を描き出す!

主要キャラ紹介

▼花菫(かきん)
庶民出身の下級妃であり人の顔に表れる死相を見る“死相視”の能力を持つ。死相が見えていた父を救えなかったことから他人の顔を見ることを避け、ひたすらうつむき内向的な性格に。

花菫

▼広治帝(こうちてい)
人形のように美しい面立ちからは一切感情が測れない。病弱と噂され、政務は義理の母である皇太后が支えている。地位は不安定で後宮の派閥争いの一端となっている。

広治帝

▼如意(にょい)
見たものを魅了する聡明で美しい容貌を持つ官女子。 混乱の渦中に花菫の“死相視”に気づき協力関係を結ぶ。彼女の知識と機転の裏には秘密があり……。

如意

  • 読書感想文レビュー
  • ファンタジー
  • 中華・後宮
  • サスペンス
  • 仲村友巳

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    没落商家の娘・花菫(かきん)は家のため後宮に入った。
    だが秘密を隠し息を潜めるように生きてきた彼女は、気弱さを侮られて周囲に見下されるばかり。
    夜伽の声もかからず、侍女の碧玉(へきぎょく)の明るさだけが救いだ。

    そんな折、皇帝が崩御し後宮全員に殉死が命じられる。
    必死に逃れるが、花菫たちは四凶殿(しきょうでん)――危険な試練を越えねば脱出できない地下迷宮に追い込まれてしまう。

    碧玉のため、花菫は隠してきた忌むべき力を使うと決める。
    それは死を予知する「死相見」の力で――。

    非力な妃が、誰より強く美しく花開く。
    後宮死亡遊戯、開幕。

    ==登場人物==

    花菫(かきん)
    庶民の出の下級妃。
    死相が出た父を救えなかった過去があり、他人の顔を見ることを避けて生きてきた。

    広治帝(こうちてい)
    人形のように美しく、感情が読み取れない。
    病弱ともっぱらの噂。
    皇太后と親子関係にあるが、実子ではない。

    如意(にょい)
    後宮内で働く謎の官女子。
    絶世の美しさを誇り、まなざしは理知的。
    花菫の力に気づき、協力をもちかけてくる。
    もえぎ桃 (著者) / とよた瑣織 (イラスト)
    発売日: 2025/09/12
    • ファンタジー
    • 異能/能力
    • 頭脳バトル
    • 中華・後宮
    富士見L文庫
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