【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は富士見L文庫から9月12日に刊行された 『二階の悪魔さん 地獄への帰り方、探してます。』です。みなさんの感想も聞かせてください!
何者かによって人間界に召喚され……そして放置された悪魔アヴナス。悪魔が地獄へ戻るには、召喚者と契約し、願いを叶えなくてはならない。仕える主のためにも、一刻も早く召喚者を見つけ、地獄へ戻らねば。──でも、もう24年も経ってますけど!?
と、ざっくりつかみの部分を紹介しましたが、これだけでも面白そうですよね。そして読了して感じたのは、本当に大切な物事というのは得てして、手元にある時にはわかりにくいもの。そんな教訓を、あらためて思い知らされました。ラストシーン以降の、その後のアヴナスがどう変わったのかと考えるのも楽しくて、もう老若男女、誰にでもお勧めできるような、不思議でほっこりできる素敵な作品でした!
下町の風情が残る街で展開される、ちょっと変わった人々による、ちょっと変わった物語が本作。暗くて、素っ気なくて、とにかく怪しいアヴナスが24年間も人間界で生活できていたのは、かれがずっと愚かな生物として見下してきた人間のおかげでした。現代では失われつつある、助け合いの精神です。結局、悪魔であっても、ひとりで生きるのは難しいんです。常に主からのハラスメントに脅かされていた地獄での日々と比べれば、下町に住む人々のおせっかいをちょっとくらい面倒に感じても、どちらでの暮らしが幸せか、悪魔でもわかるでしょう。まあ、彼の場合は、それに気づくまで、だいぶ長い時間がかかったようですが。唐揚げの美味しさには、初めて食べた瞬間に気づいたのにね……(笑)。
文:瀧田伸也
ざっくり言うとこんな作品
1)訳あって人間界で暮らす、悪魔・アヴナスこと「阿熊」。彼の周囲にいる人々は、優しくていい人だけど、なんだか癖のある人ばかり!
2)気高き悪魔として、心の中では常に人間を見下していた阿熊。そんな彼も、いつの間にか文たちの思いを心地よく感じるように……?
3)下町の風情が残る街で展開される、ちょっと変わった人々のちょっと変わった物語は、老若男女を問わず楽しめる面白さ!
主要キャラ紹介
▼アヴナス
欺瞞の王・ベリアルに仕える、地獄の侯爵。人間界では「阿熊(あくま)」と名乗り、弁当屋の二階に間借りしている。地獄へ戻るため、自身を呼び出した召喚者を探しているが……?

▼真辺文(まなべ あや)
今は亡き両親から継いだ「みのる弁当」を切り盛りしているシングルマザー。地元の合唱サークルの助っ人を阿熊に依頼したのをきっかけに、謎だらけの彼に興味を持ち始める。

▼城司(じょう つかさ)
阿熊に悪魔が憑いていると察知し、彼を助けようと尾行していた祓魔師。自己流ながら、悪魔祓いの実力はかなりのもの。しかし、阿熊本人が悪魔であることには気づいていない。

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