新作ラノベの誕生には、笑いあり、涙あり、驚きあり! 作品の見どころから、キャラクター誕生秘話、こだわりのストーリー展開まで、作者自らが「新作ラノベの執筆のウラ話」を語る、新コーナーがスタート!
第一回目は、9月20日にファンタジア文庫から発売される注目の百合ラブコメ、『すぐケンカする都会ギャルと京美人を仲直りさせたいだけなのに!(※わたしを取り合うのはやめなさい!)』について、著者の山賀塩太郎先生に語っていただきました。
百合愛あふれる、執筆のきっかけ
みなさま、はじめまして。突然ですが、百合、足りていますか? 私はときどき欠乏症に陥ります。そこそこ幅広い作品を手に取るほうではありますが、不思議と読まずにはいられないジャンルが百合です。女の子が想いを交錯させるさまは、何度読んでも強く惹きつけられる美しさがあるように思います。本作「わたやめ」は、そんな私の思う「美しいもの」を詰め込みました。その制作の裏話にお付き合いいただけますと幸いです。
「わたやめ」執筆の大きなキッカケとなったのは『GirlsLine』の発足――私がデビューするキッカケになった、ファンタジア文庫が百合プッシュをはじめたことでした。
昨年の夏、前作の執筆がひと区切りしたタイミングで、私は次回作に向けてネタ出しをしていました。当初は前作から引き続き男女のラブコメを出す方向で考えていたのですが、その最中『GirlsLine』の存在を知らされました。そして編集さんから言われたわけです。「百合ネタの企画も歓迎ですよ」と。百合好きの私としては、願ってもないチャンスでした。このようにして「わたやめ」は動き出したのです。
めんどくさい子は最強かわいい? ツンデレ京美人・観月織音の誕生
さて、本作には観月織音という京都出身の女の子が登場します。表紙の黒髪の子です。京都人らしく回りくどい言い回しを好み、本心が見えづらく、ややツンデレで、とてもめんどくさい子です。かわいいですね(めんどくさい子はかわいいので)。

実のところ「わたやめ」の世界はこの観月織音を中心に広がっています。というのも私自身が京都人であり、出身地のアドバンスを活かすべく「京言葉を使うヒロインを書きたい!」と以前から考えていたのです。京美人ヒロインなら解像度を高く書ける自信がありましたし、手応えのあるネタでした。
三角関係「好き」と「嫌い」の攻防戦で、百合ハーレム誕生!
そこからキャラを追加していくことで、現在の百合ハーレムのかたちになりました。ひとりは「因縁の相手兼恋敵」である田桐聖良。そしてそのふたりに挟まれるピュアガール――栗本燕が生まれたのです。全員しっかり濃いキャラになっていますので、ぜひ注目して読んでいただきたいです。
また、本作は百合である以上、関係性と感情にもかなりこだわっています。
これは大学の恩師からの受け売りですが、「好き」と「嫌い」は隣接した感情です。「嫌い」はネガティブな感情のように見えて「強く相手を意識している」という性質は「好き」と一致しています。
「わたやめ」は明るくてポップなコメディではありますが、いろいろな種類の「好き」と「嫌い」が複雑に絡み合う話でもあります。聖良と織音は燕のことが「好き」ですが、燕はふたりに対して素直な「好き」を返せません。そして聖良と織音はお互いのことを「嫌い」だと感じていますが、ただ憎み合うようなわかりやすい関係ではありません。
「まっすぐな好き」ばかりではないからこそ、恋愛は楽しくて愛おしいものです。宝石のように美しい関係性を「わたやめ」から感じていただけたら幸いです。

素敵なイラスト、三人のわちゃわちゃ、ご期待ください!
最後になりましたが、本作は担当さんとイラストの昆布わかめ先生のおかげで最高の一冊になったことを伝えさせてください。担当さんは最後まで根気よく原稿のブラッシュアップに付き合ってくださり、デザインも素敵にまとめてくださっています。昆布わかめ先生の描く三人は生き生きとしており本当にかわいらしく、キャラの魅力を300%引き出してくださりました。イラスト目的でも満足まちがいなしです。
もちろん作者である私も気合いを入れて書き切りました。三人のわちゃわちゃして軽快なやり取りのなかに、女の子たちの機微を見出してくれるとうれしいです。
文:山賀塩太郎
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