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「男だったら宰相にもなれた」 ほどの才媛による世直し中華ファンタジー! 皇后の座を賭けた仕事勝負の結末、そして国家立て直しの行く末は――?

2025/09/22

【新作文庫先読み感想文レビュー】
今回は9月22日に刊行の『斜陽国の奇皇后』(著:神雛ジュン/イラスト:丑山 雨)です。みなさんの感想も聞かせてください!



 本作の主人公・夢珠(むじゅ) にとって、幼い頃からの“推し”は宴で見かけた天女のような五娘(ごじょう)です。五娘に再会した彼女は、もう一度彼女の美しい琴の音を聴くためにも、皇位争いで疲弊した国を立て直して平和をもたらさなければいけないと決意し―― そんなきっかけから始まる夢珠の壮大な“推し活”の物語には、共感ポイントがあちこちにちりばめられていました 。

 夢珠が国の立て直しのため仕事に打ち込む女性としての姿はもちろん、一転して大好きな人を前にしたときに隠せなくなる心の昂りのチャーミングさもたまりません 。
 強く慕う五娘の前で高揚感のあまり挙動不審になったり、失態を怒られて凹んだりする姿は、国内外の政治を影から支えて辣腕をふるういつもの夢珠の凛々しさとは大きなギャップがあり、愛おしくなります。

 現代の多くの人にとっても、“推し活”は身近な存在だと思います。アイドルや俳優、二次元のキャラクターやVTuberなど、大好きな推しの存在は私たちの生きる原動力になっています。 だからこそ、夢珠の姿は共感を呼ぶのだろうと感じました。

 憧れの人・五娘との関係だけでなく、好敵手と呼びたいライバルポジションの九歌(きゅうか)とのやり取りにも心を揺さぶられました。 当初は敵対していた二人がお仕事勝負を通じて少しずつ相手を知り、自分にはないものを持った存在として互いを認めあっていく。他人の足を引っ張ったり、歪んだ愛情や執着をみせるキャラクターがいるからこそ、より一層二人の互いを高め合うような関係性が尊く感じました。

 当初はヒール役にしか見えなかった九歌が実は秘めていた意外な一面をはじめ、自らの信念を貫こうとする女性キャラクターの造形がとても魅力的です。後宮陰謀譚×シスターフッドという、私の大好きな要素が詰まった小説でした。


文:嵯峨景子


ざっくり言うとこんな作品


・『皇后の座』を賭けて、皇后である主人公が皇帝の寵妃に仕掛けるお仕事勝負の面白さ

・主人公・夢珠の原動力は五娘が再び音楽を奏でられる国にすること。国の立て直しという最強の推し活

・推し活からの仕事に生きる夢珠、仕事を通じて自分を見つける九歌、気丈な皇太后としてふるまう五娘など多彩な女性陣のそれぞれの強さ


主要キャラ紹介


夢珠(むじゅ)
男であれば宰相は間違いなしと言われるほどの才媛。政務に慣れていない皇帝の雲寧を支えるために皇后となった。滅亡に向かいつつある大誉帝国を立て直そうと奮闘中。

夢珠
夢珠


雲寧(うんねい)
皇位争いに巻き込まれず唯一生き残り、棚ぼた的に大誉帝国の帝位についた若き皇帝。夢珠を皇后として認めず邪険に扱う。芸事に秀でているが、国政に全く興味を示さない。

雲寧
雲寧


九歌(きゅうか)
雲寧の寵妃。艶やかな美しさで雲寧の寵愛を一身に受けている。皇后の夢珠をライバル視し、何かと張り合う。夢珠の提案で皇后の座を賭けた仕事勝負をすることになるが……。

九歌
九歌


五娘(ごじょう)
雲寧の母。少女の儚さを思わせる可憐な容姿と、皇太后としての威厳をあわせもつ。夢珠にとって憧れの人で、幼い頃に宴で見かけて以来、五娘の美しさと琴の音色に惚れこんでいる。

五娘
五娘


  • 読書感想文レビュー
  • 嵯峨景子
  • 角川文庫 キャラクター文芸

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    皇位争いで疲弊した大誉帝国を立て直すため、
    皇帝と政略結婚をする事となった。
    婚姻の儀で皇帝から「皇后とは認めない!」と言われても、
    夢珠は愛する国と自らの願望のため政務に励んでいた。
    それをよく思わないのが寵妃・九歌。
    日に日に悪質になる嫌がらせを止めるため、
    夢珠は九歌に皇后の座を賭けた仕事勝負を持ちかけるが――。
    世直し中華ファンタジー堂々登場!
    神雛ジュン (著者) / 丑山 雨 (イラスト)
    発売日: 2025/09/22
    角川文庫 キャラクター文芸
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