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当代唯一の勇者となった旧友の困り事を解決するうち、英雄譚を裏から支える陰の立役者に!? どこか心温まる成り上がりファンタジー!

ドラゴンノベルス
ドラゴンノベルス
2025/09/05

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はドラゴンノベルスから9月5日に刊行された『S級勇者の友人A』です。みなさんの感想も聞かせてください!


 アイドルにはマネージャー、社長には秘書……といったように、全力のパフォーマンスを発揮するためには“サポート役”の存在が不可欠だ。では日々訓練や魔物討伐に励む勇者たちにも、陰ながらサポートする人物が必要ではないだろうか。とはいえ本作は、手助けの範疇を越えた八面六臂の活躍を主人公・トマーシュはすることになるわけだが……!

 学生時代の友人でもある勇者・ミロスラフと再会したトマーシュも、ひょんなことから勇者パーティーを裏からサポートすることになる。本作からは冒険譚……というより、会社を一から立て直していくかのような雰囲気が感じられ、ファンタジーに不慣れな人でも踏み込みやすい一冊だと感じた。表舞台で派手に暴れ回るわけではないが、舞台裏からこっそりと活躍するワクワクがあって、むしろそういう楽しみ方が好きな人も多いかもしれない。

 多くの物語において“完全無欠な存在”として描かれがちな勇者だが、パーティーに所属しているのは一癖ある人ばかり。生活費がなくなる度に魔物を討伐したりと、まるで自転車操業のような生活を送るミロスラフや、究極の指示待ち人間であるマティアスと、むしろ「今までよくやっていけたな……」と思わせるような人柄が面白くてたまらない。
 また登場するキャラクターたちはスッと頭の中に入っていくほど濃すぎる人たちばかりなので、「この人誰だっけ……?」と思うことも一切なく、スムーズに読み進められるのも嬉しいところだ。

 身分や立場は違えど、当時と全く変わりなく接する2人の様子も胸に染み渡る。ライフステージや環境が変化しても、今仲良くしている友人とは20年、いや30年経っても気兼ねなくお酒を酌み交わせる仲でいたい……。そう思えるような作品だった。

文:渡辺美咲

ざっくり言うとこんな作品

1)一般市民が勇者や仲間たちの悩みを次々と解決。お人好しな主人公が、元貴族としての知識や人脈をフル活用してあらゆる問題に奮闘する姿は読んでいて爽快すぎる!!

2)成績優秀、腕っぷしもバツグン、そしてイケメン……と非のうちどころがないミロスラフを悩ませる金銭問題とは?予想もしなかった恐るべきギャップに圧倒される!

3)没落貴族の小役人が、勇者パーティーの金庫番へと大出世!?旧友との再会から始まった友情あり、冒険ありなストーリー展開に、思わず読む手が止まらない!

主要キャラ紹介

トマーシュ・クラシンスキー
実家が没落し、現在は小役人として日々働く青年。偶然再会した旧友・ミロスラフが抱える“問題”を解決したことで、勇者パーティーとの交流を徐々に深めていく。

ミロスラフ・ハヴリク
トマーシュの学生時代の友人。魔王討伐の実績もある“勇者”として周りからは一目置かれる存在だが、金欠になるたびに魔物を狩りに行ったりと、かなりギリギリの生活を送っている。

カミル
勇者パーティーに所属する天文学者で、報告書の取りまとめや物品の管理といった雑務を一手に引き受けている。学者ながらもパーティーに所属しているのには理由があるそうで……?

マティアス
勇者パーティーに所属する聖堂騎士。初対面であるトマーシュにも友好的に接していたりと温厚な人物だが、自己主張が非常に少なく、指示待ち人間なところがある。

  • ファンタジー
  • 渡辺美咲
  • 読書感想文レビュー

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    納戸 丁字 (著者) / 藤未都也 (カバーイラスト)
    発売日: 2025/09/05
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