【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は角川ビーンズ文庫から9月1日に刊行される『蜂蜜令嬢の契約結婚 雇われ妻に甘い恋は不要です!?』です。みなさんの感想も聞かせてください!
光と闇でいえば、問答無用で闇属性のキャラクターに惹かれるタイプです。しかしながら本作で私が心を撃ち抜かれたのは、圧倒的な光属性のオリヴィア! へこたれない強さと他人を思いやる優しさ、そしてピンチを切り抜ける賢さを兼ね備えた最高のヒロインです。壁を作って自分と一線を引くシオン側に無理やり踏み込むことはせず、けれども使える機会は決して見逃すことはなく活用し、少しずつ距離を詰めていく。まるで懐かない猫を巧みに手なずけてみせる飼い主のようで、頑なでツンツンとしたシオンの変化に思わず口角が上がってしまいます。

当初は「なんだこの冷酷で自分勝手な男は」とあまり好感を抱けなかったシオンも、過去の事情が明らかになるにつれて、どんどんイメージが変わっていきました。現実世界でも、真面目な人ほどシオンのようになんでも一人で抱え込み、苦しんでいる人が多いように思います。他人との関わりを拒絶し、どんどんと自分を追い込んでいた不器用なシオンの姿には胸が痛くなるし、契約妻に心を救われて自分も変わりたいと行動を起こしていく姿を応援したくなりました。最初は冷たい態度だったからこそ、その後のシオンがみせる甘さや頼もしさにきゅんとさせられます。
一番好きなシーンはエリザ姫の子どもじみた独占欲、独りよがりの愛に対してオリヴィアが正論をたたきつける場面です。シオンのために怒るオリヴィアの姿、その圧倒的なまぶしさをぜひご堪能ください。
文:嵯峨景子
ざっくり言うとこんな作品
1)不遇な契約結婚にもめげない! 相手に冷たくされてもへこたれず、前向きに行動を続けるヒロインの気持ちのよい強さに共感!
2)徐々に明らかになる夫の切ない過去に「幸せにしてあげたい……!」と願うヒロインを応援したい!
3)ヒーローに歪んだ執着をみせるわがままな王女様VS夫を心配するつよつよ契約妻の対決が白熱! 冷酷な公爵の心を溶かすバトルにも注目!
主要キャラ紹介

オリヴィア・バーレイ
サレナンド王国の男爵令嬢。蜜蜂を育てて蜂蜜を採るのが好きで、虫を育てて喜ぶ変わり者だと言われている。一年間の期限つきで契約結婚したシオンに歩み寄ろうと奮闘中。
シオン・アルシュターク・オルド
リアレンド王国の男爵。父が急死し、爵位を継ぐためだけにオリヴィアと契約結婚した。エリザ姫の警護で多忙な日々をおくる。オリヴィアに冷たい態度を取り続けるが……。
エリザ・ティルフィード・リアレンド
リアレンド王国の王女。幼い頃に足を怪我し車椅子生活になった。護衛騎士として自分に仕えるシオンに対して強い執着を抱き、オリヴィアの存在を疎ましく思う。
- 嵯峨景子
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