漫画の主人公に転生したのに、その座を別人に譲った!?　そんな彼・ブレイブのその後の生き様は――？

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMFブックスから8月25日に刊行される『俺は勇者に向いていない　～主人公を譲ってあげたら世界が滅亡しかけてるんだが……～１』です。みなさんの感想も聞かせてください！

　物語冒頭から自分は勇者に向いてないと、カインに勇者役を明け渡すブレイブ。確かに、漫画の主役を飾る、いわゆる王道的な勇者なら、向いていないのでしょう。自分を過大評価しないし、敵を過小評価もしない。冷静に状況判断ができて、勝つためには手段を選ばないリアリスト。王道勇者にはなにか、親しみやすい要素があったほうがいいと思いますが、カインはきっと、そういう要素を演じるのが上手だったのでしょう。口だけはよく回りそうですし。反面、ブレイブには、それがない。そうする気もない。

　しかし、生まれた村を離れる前に周辺の魔物を一掃しておいたり、ルミエラのことを案じて、あえて契約しなかったりと、ちょっとひねくれているけれど、義理堅さや思いやりの心は持ち合わせているのです。たとえ本来の勇者としての義務感からだとしても、四天王相手とはいえ、最低なタイミングで奇襲したとしても。理由や手段はどうあれ、世界を救うためにひとりで魔族に立ち向かう存在は、勇者と呼んでいいのではないでしょうか。文句は言うけど、なんだかんだでやることはやる。王道じゃなくても尊敬に値する勇者だと、自分は思います。

　そして、本作にはもうひとり、個人的に尊敬できる人が。その名は……C級冒険者のグレッグ。彼の優しさやなけなしの男気も、ブレイブが動き出すささやかな一助になったのではないかなと。勇者らしからぬ勇者のブレイブは、次はどんな手で攻めるのか、期待が膨らみます。

文・瀧田伸也

ざっくり言うとこんな作品

１）異世界転生した先は、読んでいた漫画の勇者・ブレイブ。しかし彼は、もうひとりの転生者・カインに勇者の役目を譲ることに!?

２）原作のような展開で活躍する勇者カイン一行と、気ままな冒険者生活を楽しむブレイブ。このまま、順調に進めばよかったが……？

３）勇者一行や騎士たちは敗走し、王国も帝国も崩壊。世界が魔族に占領されていくなか、ついにブレイブが（義務感で）動き出す！

主要キャラ紹介

▼ブレイブ
主人公が転生した姿であり、彼が生前読んでいた漫画の勇者。カインを「真主人公君」として勇者の座を譲ったが、いざという時のため、原作知識を活かして修行は続けている。

▼カイン
ブレイブと同じ村に生まれた、もうひとりの転生者。原作漫画は好きだったがブレイブのことは見下しており、転生後は前世と原作の知識を駆使して、勇者の役目を勝ち取った。

▼ルミエラ
封印から目覚めた光の精霊。光の属性を持ちながら自身と契約しようとしないブレイブに最初は戸惑うも、友人として接してくれる彼を好ましく思い、祠から彼を見守っている。

▼カエルレウム
「玲瓏のカエルレウム」と呼ばれる、魔王軍四天王のひとり。帝国の都市・ゼルトザームを占領し、居城にしている。恐るべき強さと、寝室でも気を抜かない用心深さをあわせ持つ。