【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファンタジア文庫から8月20日に刊行された『誰もが羨む隣のクール美少女、実は脳内ピンクすぎる』です。みなさんの感想も聞かせてください!
日本には昔からサトリという妖怪がいて、そいつは人の思っていることを読み取るんだそうだ。しかも、その内容をズバズバ言い当て動揺したところをとって食うと言われている。
本作に登場する「心を読む力」を持った主人公・米峰純斗も、隣の席のクール美少女こと神楽莉央の脳内をピンク色に染めている妄想を超能力でバシバシ受け取るわけだが、サトリとは異なり、彼女に対してはあくまで「知らないフリ」を貫き通す。うーん、実に紳士的な主人公で素晴らしい。まぁその結果、莉央のピンクな妄想も際限なく流れ込んでくるわけだが。
「心が読める」という超能力とラブコメを掛け合わせると、こういうお話になるのかと笑い半分、感心半分でとっても楽しむことが出来た。
エグめなエッチな小説を読んで莉央が思い浮かべていたのは、男子たちに弄ばれるシチュエーション。それを純斗に知られて莉央があわあわと慌てふためく姿……というのも見てみたかった気もするのだが、純斗がそうして莉央の弱みを握る構図ではなく、莉央のそうした口に出して言えなかった思いや願いを感じ取り、支えてあげようとする優しい恋愛ストーリーになっていくところが、むしろ本作の良さであり、心をキュンとさせる。
いや、もちろん普通にコメディとしてそんなシチュエーションにクスクス笑ってしまう良い意味でのバカバカしさは前提としてあるわけだが。「俺だけが知っている」という部分が、嬉しくも悩ましくもあって最高だ。

そんなクールな美少女が超エロい妄想をしているというギャップは、それはそれで楽しい。苦しみや憎しみの感情まで聞こえてしまうテレパシストの苦悩から目を逸らしてくれる効果もある。でも、そうしたツカミとも言えるラブコメ展開の先で、人が人を好きになるのってどこから始まるんだろうという興味を、純斗の能力を通して感じ取れるピュアな物語になっていくのが、本作に笑いだけじゃなく感心が生まれる理由だと私は思う。なんというか、読んでいて優しい気持ちになれるのだ。
手作り弁当を勧めてくる沢里まひるや、純斗の能力のことを知ってる見留露葉といった周りの美少女たちも含めたお年ごろ女子たちの恋心の動きも、丁寧に繊細に描かれており、笑えるラブコメにもうひと味、青春の隠し味をくわえた「オススメしたくなる一冊」だといえる。
文:タニグチリウイチ
ざっくり言うとこんな作品
1)人の考えていることが聞こえてしまう超能力。その結果、隣の席の美少女がエロ小説を読んで浮かべたエロい妄想がリアルタイムで実況されるというドキドキのシチュエーションに発展!?
2)クールビューティーの神楽莉央、清純派の沢里まひる、アパートの部屋に勝手に入ってくる見留露葉という学校の三大美少女から好かれる主人公・純斗の日々が憎らしいけど羨ましい!
3)コメディ感満載で「笑える」だけじゃない。超能力という存在を通じて描かれる人間ドラマもグッとくる展開が描かれていて、奥深い一冊!
主要キャラ紹介
米峰純斗(よねみね・すみと)
人の心の声が聞こえてしまう男子高校生。隣の席の莉央がエロ小説の中身を思い浮かべていることも知っている。ナンパに困っていた莉央を助けて関係が深まる。

神楽莉央(かぐら・りお)
純斗の隣の席に座っている美少女。文武両道で男子からよく告白されるが一度も応じたことがない。部活にも入らずいつも席に座って本(エロ小説)を読んでいる。

沢里まひる(さわり・まひる)
学校中の誰からも好かれている美少女。純斗のことが好きで昼時に近づいて来て弁当のおかずを差し出すがすべて塩辛い。バスケ部に所属している。

見留露葉(みとめ・つゆは)
純斗が暮らしているアパートの部屋をよく訪ねてくる美少女。純斗が持つ人の心を読む能力のことを知っており、自身もすべてを透視してしまう能力を持っている。

- コメディ・ギャグ
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関連書籍
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誰もが羨む隣のクール美少女、実は脳内ピンクすぎる教室に姿を現せば誰もが視線を奪われ、さらには成績優秀、運動神経バツグンの完璧クール美少女――神楽莉央。しかし隣の席で実はテレパシストの俺、米峰純斗だけは知っている。
『複数人に弄ばれているのに、体は抗えない……とてもいい』
彼女が自分の席で読んでいるのはエロ小説(エグめ)だということを!
そして数学の授業中に『あの先生、竿役にいそうだよなぁ……』と最悪な連想をしたり、体育の時は女子に対して『胸おっきいよなぁ。後ろから揉みしだきたい』と神楽の脳内は常にピンクすぎることも!
誰とも深い仲にならない彼女だが、なぜか俺にだけは心を開き距離を縮めてきて!?
第9回カクヨムWeb小説コンテストラブコメ部門〈特別賞〉&〈CW漫画賞〉受賞作!発売日: 2025/08/20ファンタジア文庫