【新作文庫先読み感想文レビュー】
今回は8月25日に刊行された『皇帝の調色師 昇龍を白は彩る』(著:干野ワニ/イラスト:未早)です。みなさんの感想も聞かせてください!
皆さんはパーソナルカラー診断という言葉を聞いたことはありますか? これは肌や髪、瞳の色を分析してその人に調和する色を導き出すメソッドで、自分に似合う色を知ることで顔色がよくみえたり、魅力を引き出す服が選べるようになると、日本でも大流行中です。宦官に扮した彩玉が、日焼けをして顔の赤みが目立つ黄燎に似合う黄色を見つける場面は、まさにパーソナルカラー診断そのものです。これまでさまざまな後宮お仕事小説を読んできましたが、パーソナルカラー診断という設定(物語の言葉では「調色師」)に出会ったのは初めてで、「おっ」と目を引きました。
このシーンをはじめ、ストーリー全体に「色」が深く関わるのが本作の面白いところで、染色や色に造詣が深い彩玉は大活躍します。後宮に入ってからはずっと自分を押し殺してきた彼女が、よい意味で開き直り、自分の未来を自分の手で切り拓いていく様はかっこいいの一言! 鬱屈を抱えながら生きている人にとって感情移入しやすいキャラであり、彩玉の姿を見ているうちに、「自分も一歩踏み出してみよう」といつの間にか励まされています。
彩玉と宦官の入れ替え、さらには皇帝と双子の弟の入れ替えの二つが絡みながら進行する本作。皇帝の座をめぐってさまざまな思惑が入り乱れる中で、彩玉は国を揺るがす陰謀の真相を暴こうと奮闘します。本格的なミステリ要素も本作の大きな見どころで、希望に満ちたラストがまぶしく、清々しい気持ちで物語を読み終えました。
文:嵯峨景子
ざっくり言うとこんな作品
・がけっぷち皇后が、持ち前の行動力と「調色」の力で自らの道を切り開く中華お仕事エンタメ!
・皇后・彩玉は下っ端の宦官・彩珂に成り代わり、皇帝の弟・黄燎は兄である皇帝・黄紹に成り代わるという、ダブル身代わりのハラハラ感。
・皇帝や皇后の座をめぐり、様々な人の思惑が渦巻く中で、本格的な謎解きの機会も。ヒロイン彩玉の度胸と頭の回転の良さが光ります。
主要キャラ紹介
白彩玉(はくさいぎょく)
白氏の分家筋の娘でひょんなことから皇后に選ばれた。だが皇帝とは打ち解けられず、暗殺未遂の濡れ衣で捕らえられてしまう。染色や裁縫などが好きで、調色の才を持つ。
黄燎(こうりょう)
現皇帝の双子の弟。双子は国を乱すと生まれた事自体を伏せられ、遠い地方に養子に出されていたが、訳あって皇帝の身代わりをすることに。芯の通った性格をしている。
黄紹(こうしょう)
大晨帝国の皇帝。白皙の美青年だが病弱で、政務もままならない状況が続いている。十年以上にわたって寵妃である蒼麗妃を愛し続け、彩玉には見向きもしなかった。
彩珂(さいか)
彩玉と同郷の少年宦官で、故郷に帰りたいと願う彩玉の協力者。彩玉が宦官に変装して後宮内を密かに探っていく間、皇后の姿となって身代わりを務める。
- 嵯峨景子
- 角川文庫 キャラクター文芸
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