【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はメディアワークス文庫から8月25日に刊行される『切手がとっても高い郵便局で』です。みなさんの感想も聞かせてください!
親とか友人とか恋人とか、大切な人が死んでしまったら、どうなるだろう? 自分だったらきっと嘆き悲しみ、しばらくのあいだ立ち直れなくなると思う。もっとその人といろんな話をして楽しい時間を過ごし、感謝の言葉を伝えておけばよかったと後悔の念が押し寄せてくるんじゃないだろうか。じつは最近、父親を亡くしてしまったものだから、本作を読んでいて思い切り感情移入してしまった。
本作に登場する主人公たちはみんな亡くした人に対して強い想いを抱いている。たとえば、アラサーの美紀は推しのシンガーソングライター・一ノ瀬アサリの自殺に大きなショックを受け、建設会社のバイトで働く大木は自分を気に懸けてくれたベテラン建設員の突然の死に衝撃を受ける。いくら泣いてもわめいても、愛しい人は二度と戻って来ない——と思ったところに現れるのが「青空郵便局」。なんとこの郵便局は、天国の愛する人に手紙を送ることができるのだ。切手代はびっくりするほど高額なのだけど、自分の想いを手紙にしたためて、愛しい相手に送り、もちろん返事も受け取ることが可能だ。この送るだけじゃなくて、亡くなった人からの手紙が返ってくるところが、死者とのやり取りが発生してとても良い。愛しい人からの手紙で想いがちゃんと伝わっていることがわかり、大いに励まされる主人公たち。そんな姿に心を奪われ、思わず感極まって涙がこぼれるのだった。
自分は亡くなった父親に手紙を送ることはできないけど、想いだけはしっかり胸のなかにとどめておきたい。その気持ちを忘れなければ、前を向き、生きていく勇気がきっと出てくるはずだから。
文:中島泰司
ざっくり言うとこんな作品
1)かけがえのない家族や推しのアーティストなど、天国に行った大切な人に手紙を送ることができる「青空郵便局」が物語の舞台!
2)天国に送る手紙の切手代はものすごく高額! しかし高い金額を払ってでも、愛しい人に伝えたい主人公たちのひたむきさが胸を打つ!
3)各話の主人公たちが、死んでしまった愛しい相手との手紙で心の交流を果たすことによって、大きな感動を与えてくれる!
主要キャラ紹介
牧村美紀
広告代理店に勤める29歳。恋人もおらず寂しい生活を送っていたところ、路上でライブ中のシンガーソングライターの一ノ瀬アサリと出会い、彼女の歌に励まされるようになる。
大木渡
家庭に恵まれず、高校を中退後、フリーター生活を余儀なくされた青年。たまたま建設会社のバイトをしたことから、その会社のベテラン社員・佐伯さんに親切にしてもらうが……。
一ノ瀬アサリ
「アサリん」の愛称で親しまれているシンガーソングライター。メッセージ性の強いバラードで多くのファンを励ましている。ある日突然、自殺を図り世間を震撼させる!?
織原
死者に手紙を送ることができる「青空郵便局」の局員。手紙を送りたい美紀や大木たちに対し、しれっと法外な切手代を請求する。いたってクールで事務的な性格だけど……?
- 中島泰司
- 読書感想文レビュー