7月10日に最新5巻が発売となった電撃文庫『ほうかごがかり』。
『Missing』の甲田学人先生による本作は、「ホラー」ではなく「メルヘン」とも表現され、人々を魅了しています。
そんな『ほうかごがかり』にドハマりしたと語るのは、声優の小市眞琴さん。ライトノベルをあまり読んでこなかったという小市さんに、ハマったキッカケや作品の魅力を伺いました。
「放課後のメルヘン」という文言に惹かれました
――今回の衣装は「ほうかごがかり」のメンバーたちの服と合わせた衣装をご用意してくださったとのことで。
小市眞琴(以下、小市):合わせました! がっつりと! 「ほうかごがかり」の世界に。
――それくらいお好きだということですが、ご自身のInstagramにて「ほうかごがかり」の感想を投稿されていましたが、そもそも作品との出会いはいつでしょうか?
小市:「つぎラノ(次にくるライトノベル大賞)」の受賞作発表会に呼んでいただいたんです。その時に石谷春貴さんから「小市さんにお薦めの作品がある」と言われて、ご紹介いただいたのがこの「ほうかごがかり」でした。私はそもそも子供たちが頑張る話が大好きなのですが、石谷さん的には、私が少年役を演じることが多いので、少年少女が活躍する話だから、そういう意味でも「読んで欲しい!」と教えていただいたんです。しかもその場で1巻を頂いたので、「読んでみよう」と手に取ったところ、どハマりしまして(笑)。2巻以降は自分で入手して、最新刊まで読んでいます。
――読み始めた時に夢中になった要因はどんなところにありましたか?
小市:世界観がすごく好きです。昔から『地獄先生ぬ~べ~』や『学校の怪談』のような「子供×ホラー」の作品が好きだったんです。それからこの『ほうかごがかり』に関しては挿絵にある彼らの制服とかめちゃめちゃ可愛くて、はまりました。今回もその制服からインスパイアされた衣装を着ているのですが、デザインもお洒落なんですよね。それからジャンルとしての「放課後のメルヘン」という文言にも惹かれました。
――甲田学人先生の作品は「ホラー」ではなく「メルヘン」と呼ばれますしね。
小市:そのセンスもグッときました。それから、どの巻も続きが気になる終わり方になっているんです。それでつい続きを読んでしまいます。それと1巻の表紙になっている見上真絢ちゃんの物語にも引き込まれました。ここからこの子たちは、この”無名不思議”という怪物たちとどう対峙していくんだろうと思って。夢中になりました。
1巻を読み終わってすぐに2巻を買いに行きました
――五年生、六年生の子供たちが過酷な運命に放り込まれてしまいますが、ご自身のその時代はどんなお子さんでしたか?
小市:虫取りとかして、ぎゃあぎゃあ言っていた感じでした(笑)。でもこの『ほうかごがかり』の子たちは大人っぽいですよね。特に六年生組は。

――そんな小市さんはそもそもライトノベルをこれまでそれほど読んではいらっしゃらなかったそうですね。
小市:本はすごく読むのですが、ライトノベルは自分が好きなジャンルとは違うかなと思っていたんです。普段は一般文芸の、ミステリーとかが好きだったので、ライトノベルは私の中ではエンターテイメントがメインにあるような感覚があったんです。考えさせられるというよりはマンガに近いような、読んでいて「楽しい!」という感覚がメインなのかなとも思っていたので、そうした住み分けを勝手にしていたことでライトノベルには手を付けていなかった感じです。
――周囲では流行っていたのではないでしょうか。
小市:流行っていましたし、自分もオーディションを受ける上では読んでいたのですが、こんなにハマるとは思っていませんでした。なんだったら『ほうかごがかり』は1巻を読み終わってすぐに2巻を買いに行きました。続きが気になりすぎて!
――誰かに「ほうかごがかり」を薦めるとして、このシリーズの魅力をどんな風に説明をしますか?
小市:ホラーが得意じゃない人でも入りやすいかなと思います。「メルヘン」という、マイルドな括りにはなっていますし。出てくる”無名不思議”たちは、自分が小学生だった時に確かにこの噂はあったよねというようなものばかりなんです。開かずの間とかメリーさんとか。よく耳にする怖い話や「学校の七不思議」が自分の小学生の頃にもあったなと思い出させてくれるんです。確かにあったけれど、その出所はわからないし、なんとなく「こうらしいよ」と広まっていた噂。その出所は実はこうだったんだ、というお話になっているんです。ここで『ほうかごがかり』の子たちが記録をしているから、私たちの知る怪談に繋がっているんだ、という世界観で。私たちの生活と地続きのようなホラーだから、他人事になりすぎないんですよね。身近なホラーだなというところで、エンターテイメントでもあるし、ホラーでもある、その組み合わさっている感じが面白いなと思いますし、魅力だなと感じています。
――だとすると小市さんにとっては読んでいくワクワク感と共にノスタルジィも感じているんですね。
小市:感じています! 「聞いたことある」とか「わかる、わかる」というのがあるんです。あと小学校六年生の子たちが、五年生の子たちを子供扱いしているところがすごく好きなんです。大人になってからの1歳の差はあまり変わらないし、同じ年くらいの気持ちで接しているのですが、小五と小六って大きな違いがあったなと思い出すんです。小六にとっての、小五以下の子たちって、みんな庇護対象というか。守ってあげなくてはならない存在だなって思うものなんですよね。それが登場人物である二森啓くんや緒方惺くんにより出ているので、小学生の解像度が高いなっていうのも読んでいて面白いんです。「小学生ってこうだよね」という引きで見ているのではなく、ちゃんと彼らの目線で描いているんです。小学生が考えることも反映されているのが面白いなっていうのを、ホラーとは違う視点としても感じています。
――特に印象に残っているシーンやセリフはありますか?1巻で選んでいただけると嬉しいです。
小市:もうそれは真絢ちゃんが袋の中に引きずり込まれるシーンは印象的でした。頭の中に情景が思い浮かぶような描き方をしてくださっているんです。最初は読みながら舐めて掛かっていたんですよね。「ほうかごがかり」は怪異について記録をしていれば襲われないんだって。そこで真絢ちゃんの事件が初めて起こる。彼らと一緒に現実を突きつけられるんですよね。だからこそこのシーンによって引き込まれるんです。しかも真絢ちゃんにとっては「ほうかごがかり」になったことで、モデルとしての自分の仮面を外せるような希望が見いだされた瞬間だったので、このエピソードは一番、印象的でした。
臨場感を書籍としても味わえるのが面白い
――好きな登場人物はいますか?
小市:全員好きなんですけど……! でもやっぱりある意味主人公というポジションなので、啓くんはめちゃめちゃ好きです。五年生の小嶋留希くんも好きです。五年生はもう一人、瀬戸イルマちゃんがいるのですが、この2人はすごく小学生らしいんです。留希くんのエピソードはとても切なくて。でも彼が可愛くて。それが心惹かれます。
――もしも演じるなら、誰を演じたいですか?
小市:啓くんですね。声質的にも合いそうですし。啓くんは感情があまり表には出てこないんですけど、みんながおびえる中で「俺が無名不思議を退治する」っていう強さがあるんです。かっこいいんですよね。だから演じるなら啓くんを演じたいです。
――これから作品を知る方に向けて、メッセージをお願いいたします。
小市:人間の感情を揺さぶってくる作品です。登場するメンバー一人ひとりにスポットが当たりますし、どうしてこの子たちが「ほうかご」に呼ばれたのかも理由がある。しかも”無名不思議”はそれぞれの子の背景に関係した怪異になっているんです。過去の自分と向き合わなければいけないとか、今の自分と向き合うとか。ホラーとしてだけじゃない、彼らがどうやって自分と向き合っていくか、”無名不思議”の恐怖に立ち向かう姿は心打たれます。読んで損はないです。甲田さんの手法なのかと思うのですが、イルマちゃんが周囲が見えなくなっていくときに文字がどんどんなくなっていって、ページの白さが増していくんですよね。その臨場感を書籍としても味わえるのが面白いので、読んでみてもらいたいです。

<プロフィール>小市眞琴(こいち・まこと)
2月17日生まれ。長野県出身。tomorrow jam所属。
代表作は『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』のロイド役、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の明神弥彦役など。
取材・文:えびさわなち
ヘアメイク:西田聡子(ZERO-ONE SONIC PRODUCTION)
- ホラー
関連書籍
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ほうかごがかり 01よる十二時、ぼくらは『ほうかご』に囚われる――。
『ほうかごがかり 二森啓』
小学六年生の二森啓はある日、教室の黒板に突如として自分の名前が謎の係名と共に書き込まれているのを目撃する。その日の深夜十二時、自室。学校のチャイムが爆発的に鳴り響き、開いた襖の向こうには暗闇に囲まれた異次元の学校――『ほうかご』が広がっていた。
学校中の教室に棲む、『無名不思議』と呼ばれる名前のない異常存在。ほうかごに呼び出された六人の少年少女は、それぞれが担当する化け物を観察しその正体を記録するために集められたのだった。絵が得意な啓は屋上に潜む怪異『まっかっかさん』を捉えるべく筆を手にするが……。
鬼才・甲田学人が放つ、恐怖と絶望が支配する“真夜中のメルヘン”。発売日: 2024/01/10電撃文庫
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ほうかごがかり 02地獄のような光景が、『ほうかご』に広がる――。
瀬戸イルマには、勇気がない。
臆病がゆえに『ほうかごがかり』になってから、一度も自分の担当している『無名不思議』がいる部屋に足を踏み入れていないイルマ。
「お願い、『ムラサキカガミ』の絵を描いてください!」
そう彼女から代理で『記録』を頼まれた二森啓が返した答えは、あまりにも思いがけないものだった。それが、完全に自分の命にかかわることとわかっているはずなのに――。
『ほうかご』を受け入れて協力し合う者たち、臆病で弱くて卑怯な者、自己犠牲的な者。極限状態に置かれた子供たちが見せる強さと弱さ。
鬼才が放つ、恐怖と絶望が支配する“真夜中のメルヘン”第2巻。発売日: 2024/02/09電撃文庫
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ほうかごがかり 03僕らの手には『それら』と戦う力はない。だけど。
二森啓は思っていたのだ。もう自分は、いつ死んでもいい存在だと。
だがもう、それは叶わなくなった――。
大事な仲間を立て続けに失い、悲しみと絶望感に覆われた『ほうかごがかり』。そんな時に啓が示した明確な意思をきっかけに、『太郎さん』は隠された事実を明らかにする――「七人目の『かかり』だよ」
どうやら前年から『かかり』でありながらも、ずっと役割を逃れている人物がいるという。それを知らされた啓たちは……。
「…………ほんとに、あれがやってたことを引き継ぐのか?」
理不尽、そして怒り。追い込まれていく子供たちの、死を決した闘いの記録。鬼才が放つ恐怖と絶望が支配する“真夜中のメルヘン”第3巻。発売日: 2024/05/10電撃文庫
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ほうかごがかり 04 あかね小学校知らなかった。わたしたちが、神様の餌だなんて。
助けてください。わたしたちの学校の『かかり』は、いま大変なことになっています……とても理解できないことが起こっています。どうすればいいのか分かりません。
あかね小学校の『ほうかごがかり』から、『かかりのしおり』を作った者に届いた一通のメール。学校中の教室に棲む『無名不思議』と呼ばれる名前のない異常存在を観察し、その正体を記録するために集められた少年少女たちは、一人また一人、その命を『ほうかご』の暗闇に消していく。
三本足の人形、メリーさん……。これは化け物たちに捕食される運命に抗う五十嵐華菜と仲間たちの、生き残りを懸けた戦いの記録。
鬼才・甲田学人が放つ、恐怖と絶望が支配する“真夜中のメルヘン”第2部、開幕。
★宝島社刊「このライトノベルがすごい! 2025」総合新作部門七位(文庫部門12位)発売日: 2025/02/07電撃文庫
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ほうかごがかり 05 あかね小学校二人は、『ほうかご』で死んだはずなのに――。
『ほうかご』から週が明けた月曜日、死んだはずの二人の仲間が何事もなかったように生き返り、学校に登校していた。驚愕する五十嵐華菜たちの前で、混乱状態に陥る当事者の二人。「なあ……お前、本物か?」「帰ってきてくれて、マジで嬉しい」恐怖と動揺、そして喜びがない交ぜになった『かかり』たちは、次の『ほうかご』の夜を迎える。
だが彼らを待ち受けていたのは、あまりにも衝撃的な異常事態だった。華菜は理解不能な状況を打破するため、『かかりのしおり』を作った元『かかり』に接触を図るが――。これは化け物たちに捕食される運
命に抗う少年少女たちの、生き残りを懸けた戦いの記録。鬼才・甲田学人が放つ、恐怖と絶望が支配する“真夜中のメルヘン”第2部、第2弾。
年間ランキング唯一無二のホラー
★「このライトノベルがすごい! 2025」《総合新作部門》7位(文庫部門12位)(宝島社刊)
★「次にくるライトノベル大賞2024」《文庫部門》9位発売日: 2025/07/10電撃文庫