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英雄(真正ドM)を王国につなぎとめるため、王女(偽ドS)の奮闘ぶりが泣ける いや興奮する

2024/11/29

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は11月29日に刊行される『異世界転生したのでマゾ奴隷になる』です。みなさんの感想も聞かせてください!


本作の主人公、クライヒハルトは王国最高の『英雄』だ。だが同時にドが付くほどのMである。考えても見てほしい。ドラゴンを一瞬で血煙に変えるような怪物が、目の前に跪いて踏んだり罵ったりして欲しいと、Sプレイを半ば強要してくる姿を。怖くないだろうか? 私だったら怖くて仕方がない。

しかもプレイがマンネリ化し彼が満足できなければ、今度は王国を裏切ることで浴びせられるであろう罵詈雑言や、呪いの言葉で悦に浸る事を優先してしまう可能性まで危惧されるのだ。国家の最高戦力が、である。国に生きる民たちにとっては笑いごとではないのだが、私からすれば噴飯を禁じ得ない。このマゾ強すぎる。

『異世界転生したのでマゾ奴隷になる 1』より

ただ第二王女マリーの心中を思えば、筆舌に尽くし難いものがある。なにせクライヒハルトに『女王様』として見初められてしまった彼女は、Sの適性などまるでない常識的な一般王女。そんな彼女が最早危険物と化してしまった『英雄』を満足させるために、涙ぐましい努力を重ねていくのである。時に斬新なプレイのシチュエーションを模索し、時に協力者を募って盛大に。

『異世界転生したのでマゾ奴隷になる 1』より

あれこれとやりたくもないSとしての振る舞いを装う彼女の姿は、本当に健気で胸を打つ。正直めっちゃかわいい。そしていつしか彼女をサポートするイザベラと共に、マリーに──いや敬意をこめて敬称をつけるべきか。マリー様に一生ついていくッス! と思うようになってしまうのだ。ああ、クライヒハルトが彼女を気に入る気持ちが、少し分かったかもしれない。

『異世界転生したのでマゾ奴隷になる 1』より

世間には「SはサービスのS、Mは満足のM」という言葉もあるが、この二人の愉快な関係を見ているとなるほどな、としみじみ思う。この先、SとMの二人がどこまで拗れた関係になるのか楽しみだ。

文:明日香譲

ざっくり言うとこんな作品

1)英雄譚の主人公がとんでもないマゾだったら? 異色の主人公から生まれる超王道ファンタジー。

2)とにかく主人公最強! 無敵のクライヒハルトがあらゆる勢力の思惑を力で打ち砕き、自由気ままに異世界で痛快マゾ騎士ライフを過ごす!

3)ヒロインのマリーはもうひとりの主人公。常識人のマリーがドSのフリをして胃を痛めながらマゾ主人公を手なづけて成り上がる!

主要キャラ紹介

▼クライヒハルト
転生先で自由気ままにマゾ奴隷として生きる事を心に決めた、シグルド王国最高の『英雄』。その一方で、王国最強のドMとしての顔を持つ。

クライヒハルト


▼マリー
シグルド王国第二王女。クライヒハルトを飼いならそうとする『女王様』。しかし、実際は作中きっての常識人。クライヒハルトを満足させるため考えを巡らす苦労人。

マリー


▼イザベラ
幼いころからマリーに仕え、彼女のサポートとクライヒハルトの監視を同時に行う『劇団長』。クライヒハルトを脅威に感じている。

イザベラ


▼リラトゥ
王国と危うい関係にある帝国の『皇帝』。クライヒハルトを物理的に食べたいと考えており、ドMな彼が苦手意識を持つほぼ唯一の人物。

リラトゥ

  • ホビー書籍編集部
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    戦時中の王国を守る報酬として、マリーから“ご褒美”を与えられる。そんな充実した日々を気ままに送るクライヒハルトであったが、常識人のマリーは彼を王国に繋ぎ止めるべく“女王様”を演じて胃を痛める毎日。さらに周辺諸国の強者たちもクライヒハルトを懐柔しようと策を巡らせており――!?
    マゾ気質な最強騎士と彼に振り回される人々が紡ぐ制御不能の英雄譚、開幕!!

    【書籍版限定の書き下ろしエピソード2本収録】
    ・書き下ろし番外編『裏方の彼女たち』
    ・書き下ろし番外編『エピソードゼロ』
    成間 饅頭 (著) / 水龍敬 (画)
    発売日: 2024/11/29
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