【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は8月12日発売の 『マダム・ミニョンはご遺体しか愛せない』です。みなさんの感想も聞かせてください!
世の中の常識というものは、案外すぐに塗り変わるものです。たとえば、僕が中学生になった頃、世間では「アニメファン、オタクは気持ち悪い。犯罪者予備軍」という認識が広まっていました。すでに深夜アニメが社会現象になりつつある時期ではあったのですが、さすがは固定観念が凝り固まった田舎。ライトノベルを読んでいるだけで生徒指導の教師に怒られる、なんて時代だったのです。しかし、今はそんなことはなく、深夜アニメの劇場版が世間を賑わし、街中で二次元キャラを目にすることも多くなりました。そうやって常識なんてものは塗り変わるものなのです。でも、酷い目に遭う当事者にとっては、その常識は辛いものでしかなく。
そんなことを思い出したのは、本作で主人公が「遺体を切るのは悪」とされている世界で死因を究明するために解剖をするからです。ろくに科学知識が普及していない時代だからこそ、よりその境遇は劣悪だったであろうと想像できます。そんな状態で真相を究明していく主人公の逞しさたるや……!(そんなものとオタクが迫害されていたことを比較してはならない)
なお、僕はそんなことを考えながら、本作は医療ドラマと同じように解剖することで真相を明らかにするミステリとして読んでいたのですが……あれ、ロマンスもある!?(いや、最初からあるんですけどね)。最終盤のロマンス濃度たるや、ラブコメ好きとしては最高でございました。そのノリでもう一度頭から読み直すと、一冊で二度美味しい作品ですよ!
文:太田祥暉
ざっくり言うとこんな作品
1)初恋相手だった夫が死去。未亡人となってしまったものの、地に足を付けて自分の考えで動いていくヒロインの姿がたくましい!
2)華やかな貴族社会。まだ解剖学が浸透するどころか忌避される世界で、王宮を舞台に陰謀を解き明かすため、主人公が謎に立ち向かう!
3)そんな王宮では、前王妃をはじめ、現王妃、死んだとされる王子など、複雑な人間関係も……? 亡き夫の思いも絡む人間ドラマの行方は……?
主要キャラ紹介
▼リーゼロッテ・ウォレス
修道院で育てられた捨て子。トゥールーズ伯のレイモン・ウォレスと結婚し、修道院を離れる。タイトルにもある「ミニョン」は「可愛い男の子」を意味する彼女のシスター名。
▼レイモン・ウォレス
品の良い雰囲気の紳士なトゥールーズ伯。リーゼロッテを王妃の朗読係として出仕させるため、形だけの夫婦となった(そのため、結婚式でもキスはしていない)。
▼ハンス
首都の王立音楽院に通う楽士。宮廷のサロンやコンサートにも出入りしているほどの実力の持ち主。八年前、リーゼロッテに命を救われたことから、彼女にある想いを抱えているようで……!?
- ミステリー
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- 太田祥暉
- 読書感想文レビュー
関連書籍
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マダム・ミニョンはご遺体しか愛せない修道院育ちのリーゼロッテは、明日レイモン伯爵と結婚する。王妃の朗読係になるための形式上の婚姻だ。
友人のハンスは猛反対するが、リーゼロッテはレイモンのことがずっと好きだった。形式上の妻でも、式の口付けがフリであってもかまわない。
しかし別々の部屋で初夜を明かした翌朝――レイモンは遺体となって発見された。刺殺という見立てに納得がいかないリーゼロッテは解剖を願い出る。
そう。彼女は「魔女」と畏怖される天才解剖学者。
夫の死の真相を突き止めるため、夫の願いを叶えるため、リーゼロッテは王宮に出仕する。
「マダム・ミニョン」と呼ばれた少女と王宮陰謀劇の幕開けだった――。発売日: 2025/08/12富士見L文庫