【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はドラゴンノベルスから8月5日に刊行された『出来損ない悪役令息の俺、あえて悪評は覆さない』です。みなさんの感想も聞かせてください!
主人公が転生したのは、公爵家の生まれという権力を笠に着てやりたい放題の嫌われ者、悪役・カイザル。しかし本作が面白いのは、悪役転生モノにおける定番の流れである「行動を改めて悪評を払拭し、善人としてやり直す」という展開に発展しないこと! なんと、彼は嫌われ者として開き直り、悪名もそのままに自由に生きることを決めるのです。
人は大抵、嫌われたくないと打算で他者に接しがちだったりしますが、そうした下心に限って相手には見抜かれてしまい、結局互いにモヤモヤが残ってしまうことが往々にしてあります。
しかしカイザルは己の行動を省みて「嫌われても仕方ない」と受け入れたうえで、言いたいことをズバッと言い、腹の立つ相手とは戦闘込みの派手な喧嘩をし、心から助けたい相手は迷わず助けます。
その行動には他人におもねるところが一切ないので、見ていて気持ちがいいんですよね。「これが令和か!」と思わず唸ってしまうような新しい主人公の形を本作に見た気がします。

カイザルがどんな時もカッコよく見えるのは、圧倒的な力があるのはもちろんですが「人に好かれなければ」という気持ちに囚われていないからでしょう。
他者に好かれることは攻撃されないための防衛策でもあり、私なんかはついついそちらを選びがちです。けれどそれは時に自分を殺し偽る行為で、息苦しさを伴うことが少なくなく、場合によっては逆効果になることすらあります。
自己保身に汲々とせず、他人との衝突も厭わずに真正面から障害に立ち向かう彼はある意味とても自由で、だからこそ憧れてしまうのです。
世の中には「純粋な善意からの行為でなければ人助けとは言えない」という風潮があります。しかし、たとえ動機が自分の利益のためだったとしても、本当に困っている人にとっては助けてもらったことそのものが重要で、そこには自然と感謝と尊敬の念が生まれます。
思うままに振る舞っているだけなのに、なんだかんだで周囲から信頼を得ていくカイザルを見ていると、そのことを実感せずにはいられません。他者を極度に気遣うよりも、こういうあっさりした押しつけがましくない繋がり方のほうが、良い人間関係を築けるのかなと考えさせられました。
文:安芸 沙織理
ざっくり言うとこんな作品
1)主人公が転生したのは無能で傍若無人な公爵家嫡男カイザル。だが敢えてイメージ回復は図らない。周囲から嫌われ、軽蔑されている立場を利用して悠々と過ごす彼のかっこよさが光る!
2)前世の記憶を思い出したカイザルは、魔術も、AIロボットや様々なアイテムも使い放題! 誰にも追いつけない力で周囲を驚かせ、見下してきた相手を圧倒する爽快感たっぷりの展開!!
3)カイザルの圧倒的な実力に惹かれ、彼の下へ集まるヒロインたち。元婚約者の令嬢オリヴィアから奴隷のアーシャまで、多彩な魅力を持つ彼女たちのかわいらしさは必見!
主要キャラ紹介
カイザル・ヴィ・クヴィスト
本作の主人公。前世で使っていた無限に物を収納できる空間「ストレージ」から様々なアイテムを取り出し、使用できる。前世は国家魔術師であり、その実力は相当なもの。

オリヴィア・ド・ロレーヌ
カイザルの元婚約者。カイザルに失望し、無断で婚約破棄を計画する。しかし以前とは別人のようになった彼が実力を隠していたのだと思い込み、後悔とともに恋心を抱く。

マリエル
カイザルが持つAIロボットの一体。高い問題解決能力を持ち、調査から解決策の提案まで行う。隙あらば高級オイルをねだる。容姿はカイザルの好みに合わせた女性のもの。

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