【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は8月8日発売の『土地神様のその日暮らし~異世界から帰ってきた神官のちょっと不思議なほのぼの現代ライフ~』です。みなさんの感想も聞かせてください!
20年後の自分や世界なんて、なかなか想像できませんよね。勇者パーティの神官だった主人公、光聖さんが異世界から戻ったとき、現実世界では20年が経過。最愛の祖父はすでに亡くなっていました。光聖さんが20年ものあいだ気にかけていた祖父にもう会えないと知った瞬間は、あまりにも悲しすぎて……。それでも、祖父の神社を継ぎ、陰陽師や妖怪たちとの縁に恵まれる日々はどこか愉快で、読んでいて救われる思いがしました。とはいえ、楽しい時間の中でも、祖父との思い出がふとよみがえる描写を見るたびに、私も胸が締めつけられるのです。
私にとっての20年前は、ただただ目の前のことに夢中になったり、必死になるばかりでした。それでもどこか自分をある程度、一人前だと思い込んでいたのだと思います。ただ、振り返ってみれば、「ああ、あれは優しく見守ってもらっていたのだな」とあとになって気づける人の愛情がいくつもあって……その視線を、今ならはっきりと感じられます。きっと20歳年上の方から見れば、当時の私も「若い」と思われていたはずです。

長い人生の中ではわずかに過ぎないその時間であっても、心残りとなるほどにその一瞬一瞬は光聖さんの中に強く根付いていたのでしょう。それはきっと、祖父の愛情を再確認することとなったのだと思います。亡くなってもなお、ふとしたときに思い出す小さな出来事こそが、その人がこの世界に生きていた証となり、改めて愛情となるのだと感じました。そしてきっと、その愛情を実感するには相応の経験や年月が必要なのだということも。

生きる上での正解なんてないとは思いますが、月日の移ろいの切なさ、そして出会いの尊さを感じられる一冊でした。
文:波樹 葉音
ざっくり言うとこんな作品
1)異世界から戻ってきた元ヒーラーの光聖は、なぜかあれよあれよと現人神に!? 自覚のないまま、悪いものを力で一掃しちゃいます!
2)光聖の元には大蝦蟇や化け狸、悩み事を抱えた雨女や河童、そして妖狐までが集う! かわいい妖怪たちに囲まれた癒されスローライフ。
3)20年が経ち、異世界から戻ってきた光聖は時間の経過に思いを馳せる。なくしてしまったもの、そしてまだ変わらない絆の存在が胸を打つ。
主要キャラ紹介
▼清神光聖(きよかみ こうせい/右)
元勇者パーティの神官。現代日本に帰ってきたら、ヒーラーとしての力が強すぎて、陰陽師たちから現人神扱いされている。いるだけで、周囲の瘴気を浄化させるほどの力を持つ。
▼クズハ(左)
傷だらけで弱っていたところを光聖に救われた子狐。炭酸を夢中になって飲んだり、泥だらけになったりと、天真爛漫な姿が光聖をキュン死させてしまう。なぜか尻尾が増えていく。

▼陽葵(ひまり)
人々や妖怪たちからも長年疎まれていた貧乏神。瘴気を払うことができるという理由で、光聖の近くにいることとなった。普通の生活を送ることで、ジト目の可愛らしい少女に。

- 波樹 葉音
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