【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は8月8日発売の『無職マンのゾンビサバイバル生活』です。みなさんの感想も聞かせてください!
ゾンビがあふれかえった世界で、無職となった主人公一朗太が自由で楽しい生活を満喫する。本作を一言で言い表すならば、これで過不足はないだろう。
オーケー。言いたいことはわかる。あなたはきっと「ゾンビばかりの場所で楽しい生活なんて無理じゃん!」と──そう思ったことだろう。しかし実際に楽しそうなのだから仕方がない。誰にも邪魔されることなくD.I.Y.で住みやすく自宅を改造、家庭菜園などに勤しみ、暇なときは好きなDVDを見放題。食料はちょっとコンビニに行けば手に入るのだ。こんな生活が楽しくないわけがない。夏休みに自分だけの秘密基地を作っているような、スローライフ感が実にたまらない。ちょっとそこら辺をゾンビがうろついているが、些細な問題と言えるだろう。

要は気の持ちようなのだ。いかに破滅的な状況であっても、前向きさがあればきっとどこででも生きていけるのではないか。主人公がまさにそう。だから読んでいて安心感がある。そういえば、異常事態のさなかにもかかわらず日常的な生活に固執するのは、一種のパニック状態におちいっているなどという話を聞いたことがある。しかし私は彼がパニックの渦中にあるとは感じなかった。自分の芯をしっかりと持ち、快適な人生を生きたいという強い意志。とても気持ちの良いものだ。この前向きさは私自身も見習いたいところだ。
それに、ゾンビという外部の刺激は非日常を味わうのにもってこいの存在なのだ。脅威ではある。だが対処できないわけではないという、ほどよい刺激は、人生によい彩りを与えてくれるのだろう。ゾンビと聞いて本作をホラーだと思った人は安心してほしい。本作品はゾンビという刺激と背中合わせの、新しいスローライフ作品なのだ!
文:明日香 譲
ざっくり言うとこんな作品
1)悠々自適な生活がしたい主人公が、自前の剣術でゾンビをバッサバッサとなぎ倒していくアクションシーンは、爽快感が抜群!
2)シビアな考えを持ちながらも人のよさを隠せない一朗太。ついつい人助けをし続けていると、いつの間にか周囲から頼られる存在に。
3)ゾンビだらけの街で自給自足の無職生活を──!? サバイバルホラーの皮をかぶった、新感覚スローライフ生活が堪能できる!
主要キャラ紹介
▼田中野一朗太(たなかの いちろうた)
ゾンビの蔓延する世界で悠々自適な無職生活を満喫する主人公。基本的には善人だが、わが身を顧みない無謀な人助けはしない主義。特技としてマイナー流派の剣術を修めている。

▼神崎凛(かんざき りん)
高い戦闘力を持つ、頼り甲斐のある女性自衛隊員。ゾンビが徘徊する街を一人で生きる一朗太に興味を持ち始める。武術関係に造詣が深く、マニアな一面も覗かせる可愛らしい美人。

▼坂下由紀子(さかした ゆきこ)
一朗太を小さい頃から兄のように思っている隣家の女子高生。ゾンビに襲われ避難所生活となり、離れ離れになった母を心配している。だが父親については思う事があるようで……。

▼雄鹿原比奈(おがはら ひな)
ゾンビに襲われていたところを、一朗太に助けられた女子高生。その恩もあって、一朗太にはよく懐いている。避難所では由紀子と仲良くなり、新しい環境で生活していく。

▼桜井美玖(さくらい みく)
壊滅した小学校の屋上で、ひとり生き延びていた女子小学生。担任の先生に守られていたが、最終的に一朗太に救出される。その事もあって、避難所内では一朗太によく懐いている。

『幼女戦記』のカルロ・ゼン先生による推薦文をご紹介!
なにより、安心感とワクワク。
崩壊世界で、ワクワクって明らかに変! なのに、ワクワクとしかいえないワクワク!
楽しく拝読させていただきました。
不思議な痛快さを持つ、崩壊世界ものですね。この手のもの、リアリティラインの加減に悩んだり、『そうはならなんやろ』みたいな気持ち、
はたまた『読んでいて、共感できない』とかいろいろな落とし穴があるんですが、全部、軽快にするりとクリアする匠の技には思わずうなっちゃいました。
なにより、安心感とワクワク。
崩壊世界で、ワクワクって明らかに変! なのに、ワクワクとしかいえないワクワク!
先発投手が必ず完投してくれる。あるいは、馬券の一番人気がなんといつも勝ってくれる。
そんな不思議な『信頼』が主人公に宿っていて、主人公を信じられる。そこに、不自然さを感じさせない。
かと思えば、登場人物どいつもこいつもそれぞれ癖が強いくせに、妙に、きれいな構図。
キャラと構図の妙という点からすると、設定で詫び寂びの傾いた古民家をイメージして読み始めると鉄筋コンクリートに遭遇したような驚愕。
なにより、すっきりとした爽快感。いわば、柑橘類の良いところのエッセンス。
夏にふさわしいホラー……ホラー? ホラー? あの、これ、ホラー部門なんですか? みたいな宇宙猫顔。
安心して、肩の力を抜いて、穏やかに読める作品かと思います。あの、本当に、ホラー部門で間違いないんですよね?
お薦めすることには迷いも躊躇いも皆無なんですが、ホラーって断言するのは、微妙に怖いんですけど!?
- 明日香 譲
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