【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は8月8日に刊行された『あの夏に捧ぐ逢いことば』です。みなさんの感想も聞かせてください!
夏+ボーイミーツガール=逃避行! この完璧な足し算から導き出される物語、しかもそのガールが美少女AI YouTuberときたらもう、わくわくせずにいられませんよね!?
結論から言えばいい意味で裏切られました!
修也は根深いトラウマに囚われていて、自分の意志で選択することができません。自由になりたくてするのが逃避行なのに、彼はどこへも逃げ出せないわけですね。そんな彼の行き詰まり感がリアルで重たくて、たまらず唸ってしまいました。端的ながら心情をぐいぐい深掘りする文章の妙のせいなのですが、単純に青春ものとしての完成度が高いのですよね。主人公に焦点がしっかり据えられていて、そのドラマが太々と描き出されていて。
かくてそのまま青春ものが貫かれるかと思いきや、ユウというヒロインが現れます。
人に造られたAIである彼女は、修也によりそいながらもその人間ならではの苦しみやトラウマへさえうらやましさを感じてしまう。この寂寥が、まるで違うはずなのに修也と同じ欠落を演出していて……普通の人間より人間らしい弱さが儚げに輝くからこそユウは魅力的ですし、私の心も持っていくわけですよねぇ。

さて。そんな彼女と修也が出逢えば、それこそ人間とAIの恋物語が始まるしかないのでは? いえいえ、予想はまたも裏切られましたよ。修也が自分の意志で、これ以上なくまっすぐなボーイミーツガールの王道を走り出すことで! この清々しさはもう、最高以外に言葉がありませんね!
通して読めば確かに1本のストーリーラインが描かれているのに、折々でジャンルを鮮やかに転じては読む側の目を惹き込み続ける物語。この“やられた感”をみなさまにも味わっていただきたく!
文:髙橋剛
ざっくり言うとこんな作品
・ある意味異種族な人間男子とAI少女が繰り広げるひと夏の逃避行、その冒険の妙味とボーイミーツガールのエモさがたまらない!
・修也やユウの心情の変化が妥協なく濃やかに描き出されているからこそ分厚さを魅せる成長劇! 読み込ませられずにいられない!
・クライマックスにおいて完璧に回収されるタイトルが腑に落ちた瞬間、背筋にはしる衝撃の快さ! もう極上のひと言です!
主要キャラ紹介

神坂修也(こうさか・しゅうや)
児童養護施設『つばめ園』で暮らす中学生。トラウマにより「わがままを言えない」彼はやり過ごすようにただただ生きてきたが、愛岳ユウと出逢った夏、その生き方を変える。

愛岳ユウ(あいたけ・ゆう)
年齢不詳の少女YouTuber。しかし正体はAIである。人間のようになりたいとの思いで開発元から修也のスマホに逃げ込んだ彼女だが、実は密かな目的をインプットされていた。

如月有栖(きさらぎ・ありす)
愛岳ユウの開発者。自分に欠落した普通の人間らしさへ執着しており、それをサンプリングすべくユウを造った。追跡者かと思われたが実は彼女もまた研究所に追われていて……
- SF
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- 髙橋剛
関連書籍
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あの夏に捧ぐ逢いことば「わたしを連れてってくれませんか。誰もいない、どこか遠くへ」
何かを「願う」ことにトラウマを抱える修也へそう願ったのは、緑色に輝いて、人気youtuberでーーそして、AIの少女・愛岳ユウ。
「逃げ出してきた」と言う彼女に押される形で始まった、夏の逃避行。仄甘い共犯者と駆け抜ける夏は、全てがどうでも良くなるくらい、美しくて。その日々が、修也の心の傷を優しく縫い合わせていく。
しかしある時、ユウが修也の元を訪れた本当の目的を知りーー
「それでも僕は、ユウと一緒にいたいよ」
だから、このことばを捧ぐ
たった一ヶ月しかなかった、間違いだらけのあの夏に。発売日: 2025/08/08電撃文庫