【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はメディアワークス文庫から7月25日に刊行される『きみが死んだ八月のこと』です。みなさんの感想も聞かせてください!
シェイクスピアの『ハムレット』は、父王を殺された王子ハムレットが復讐を命じられ、愛と使命の間で葛藤する物語です。自分はこのまま周囲に流されていてよいのか、本当の自分はどう生きたいのか――そんなハムレットの姿が、時代を超えて人々から受け入れられる理由なんだと思います。
そんな話を持ち出したのは、本作『きみが死んだ八月のこと』も、人生に悩む若者たちのドラマだったから。春木初は女性に振り回される現代のハムレットのようで、恋人の有森夏希も「私はどう生きたいんだろう」と自問する。忽那冬佳は、大切な幼なじみを亡くし、自分の目標を見失ってしまう。
誰かの存在を人生の指針にして、本当に“自分の人生”を生きていると言えるのか。これまでの自分の人生ってなんだろうと悩む気持ちは、私たち読者にも他人事じゃありません。そうした登場人物たちの姿がリアルで、胸に刺さるんですよ。
夏希は、自分の人生や偽りの自分に負い目を感じている。でも、社会の中で他人と関わっていれば、ときに自分を偽ったり、ときに別人を演じたりしますよね。それは決して悪いことばかりではない。実際、春木も忽那の幼なじみも、彼女に救われてるんですよ。人間関係に悩み苦しんで、自分の人生に答えを見つけていく、これぞ青春なんですよ。
「この世は舞台、人はみな役者」もシェイクスピアの一節です。私たちは、自分らしく生きているつもりでも、誰かに期待された役を演じているだけなのかもしれない。その舞台の上でどんなふうに生きるか、どう役を演じるか。その選択こそが、大事なんだと教えられました。感動の余韻とともに、ふと自分の人生を振り返りたくなる、そんな物語でした。
文:あいさきゆうじ
ざっくり言うとこんな作品
1)付き合い始めた恋人が突然消息を絶った!! そして突然の恋人の訃報を知らされるドラマティックな展開に感情を揺さぶられる!
2)死んだ女性は自分の恋人とはまったくの別人だった!? 彼女の名前を使っていた恋人の正体を解き明かしていくストーリーに引き込まれる。
3)人生に悩み苦しむ若者たちが一人の女性の死をきっかけに、本当の自分の人生を手にいれていく人間ドラマが青春でエモい!!
主要キャラ紹介
春木初(はるき はじめ)
田舎から上京してきた大学生。失恋の痛手を受けていたところに有森と出会い、彼女に告白して付き合い始める。女性に振り回されがちな性格。
有森夏希(ありもり なつき)
新宿の花屋でバイトをしている女子大生。春木初と付き合っていたが突然彼の前から姿を消す。実は別人の経歴を偽っていた謎めいた女性。
忽那冬佳(くつな ふゆか)
デザイナーを目指す美術系の大学生。本当の有森夏希の幼なじみ。大切な人の経歴を奪っていた偽物の有森夏希へ憎しみを抱いて春木初に近づく。
- あいさきゆうじ
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