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疲れたら「逃げてもいいかも」と思わせてくれる一冊。鮮やかすぎる逃走劇に拍手喝采だ!

メディアワークス文庫
メディアワークス文庫
2025/07/25

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はメディアワークス文庫から7月25日に刊行される『公爵家の長女でした』です。みなさんの感想も聞かせてください!


 他者に我慢を強要する人間関係は、いつか破綻すると思う。本作の公爵令嬢ローザリンデは我慢を強要される側だった。妹に婚約者の王子を寝取られ、あまつさえ彼女の有責で婚約破棄、父親からは都合の良い様に政争の具にされ、母親にはいじめられる。あんまりである。

 だから彼女はキレて、全てを捨てて逃げ出すことにした。「公爵令嬢たれ」なんて大きなお世話である。なぜならば、彼女は転生前に実親から同じような扱いを受けており、それが異世界転生先でも同じだったのだ。全てが嫌になってもしかたがない。すっかり彼女を応援したくなったが、その直後の鮮やかすぎる逃走劇には思わず吹き出してしまった。家財や食料、屋敷にある目ぼしいものを一切合切かっさらって彼女は逃亡するのである。あまりに大胆な犯行……! しかし心の中では爽快感を覚え、拍手喝采をしている私がいる!

 そんな弾けっぷりを見るほどに、我慢を強いられる事の反動とは、いかに恐ろしいかを考えていた。我慢、またはストレスという言葉が身近にありすぎる現代人ならば、思い当たるフシもあるのではないだろうか。ローザリンデはそんな私たちに「逃げちゃってもいいさ」と伝えてくれているような気がした。逃げて、逃げて、逃げおおせて。逃げた先で幸せを掴めばいい。そんな優しいメッセージを私は本作から見出す事ができた。

 はたして、ローザリンデは我慢から解放された逃亡先で「自分らしさ」を求めて色々な人たちと出会うことになるのだが――本作は鬱屈したストレスを抱えている今の人たちにぜひ手に取ってもらいたい一冊だ。

文:明日香 譲

ざっくり言うとこんな作品

1)突然の婚約破棄から、孤立無援の令嬢生活――我慢の限界を迎えたローザリンデが魅せるド派手な逃亡劇に、新感覚のざまぁを味わえる!

2)誰かから役割を押し付けられる苦悩。「自分らしさ」を求めて生活を始めるローザリンデの姿に、共感すること間違いなし――!

3)逃亡先で助けた男性は、他国の皇太子!? スローライフ生活の中で発展するシンデレラストーリーには、思わずニヤついてしまう!

主要キャラ紹介

ローザリンデ
ディケンズ公爵家令嬢。王子に婚約破棄され、生活の全てを捨てて逃げ出す。


アーノルド
ローザリンデが湖畔で助けた黒髪の皇太子。彼女に強い興味を持ち始める。


ヴォイド
アーノルドの近衛。彼とローザリンデの仲を快く思っていないが、悪い人間ではない。

『私』
公爵令嬢に転生した中の人。「お姉ちゃん」の役割が嫌になり生活から逃げ出す。

  • 明日香 譲
  • 読書感想文レビュー

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     これは、自分らしく生きることにした『公爵家の長女』だった私の物語。

    【登場人物】
    ・ローザリンデ
    全てが平凡で「努力だけ」と冷遇されてきた令嬢。家出して迷い込んだ森で、アーノルドと出会う。
    ・アーノルド
    大帝国の皇太子。敵襲から逃れる最中に出会い、助けてくれたローザリンデに恋に落ちる。
    鈴音 さや (著者)
    発売日: 2025/07/25
    メディアワークス文庫
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