【新作文庫先読み感想文レビュー】
今回は7月25日に刊行された『蜂蜜記者と珈琲騎士 ブリンディル王国事件録』(著:綾束乙/イラスト:珠梨やすゆき)です。みなさんの感想も聞かせてください!
まず目を惹かれたのは物語が「産業革命期直前」をモチーフにしていること。
そう、始まる直前で、舞台はごりごりの男性社会なのです。だからこそ、主人公ミレニエは「1年以内に一面記事が書けなければ社長と婚約する」条件つきでなければ新聞社へ入社できず、入社後も女性故に軽く扱われ、記事を書くチャンスがもらえないままでした。
でも、ミレニエはただ婚約が嫌だ、男どもを見返してやるんだじゃなく、人々へ真実を届けたいと決意してとにかく前へ突き進むのです。最悪の逆境の底にいるからこそ輝くまっすぐな力強さ、心を鷲掴まれましたねぇ。
しかもですよ。彼女とラナジュリア王女との出会いがまた効いているのです。
ミレニエは職業人女性、ラナジュリアは産業革命推進者、ふたりともまさに女性の社会進出の先駆者です。彼女たちの覚悟と志がしっかりと芯に通された物語には終始なにかが始まる高揚――言ってみれば祭前夜さながらなワクワク感があって、胸躍らされずにいられません。しかもこのワクワクが彼女たちの先を阻む事件をより緊迫させ、ミレニエとカイルのロマンスをより甘々に蕩かす2種類のドキドキを匂い立たせる。構造の妙ですね、これは。
構造で言えば、すべてのドラマがミレニエから始まっていることも見逃せません。
彼女の心情や様々な一面が深掘りされて、そこから発する思いや行動がカイルやラナジュリア、他のキャラクターの心をも動かしていく。時代でも物語でも起点を担う女、これ以上の主人公がいますかって話ですよ!
最高の主人公が描く極上の物語、そのクライマックスでは予想だにしなかった真実が明かされます! ぜひご自身の目でご確認あれ!
文:髙橋剛
ざっくり言うとこんな作品
・伯爵家令嬢の立場を棄てて男性社会へ飛び込んだミレニエが、逆境に負けることなく夢へ向かって走り続ける姿に勇気づけられる!
・ミレニエとカイル、最悪から始まる関係が花綻ぶように甘やかなときめきへと昇華していく――そのロマンスは極上のひと言。
・ラナジュリア王女を軸に繰り広げられる騒動へミレニエとカイルが挑む! 手に汗握るサスペンスドラマも見逃せない!
主要キャラ紹介
ミレニエ・ルーフェル
ブリンディル王国の伯爵家令嬢ながら家を飛び出し、新聞記者となった女性。意欲も気概も十二分だが女性故チャンスに恵まれず、ラナジュリア王女訪問に突破口を見出した。
カイル
珈琲色の瞳が印象的な近衛騎士。ブリンディル王国訪問中のラナジュリアを護衛する中でミレニエと出遭い、苦難を共にする中で次第に惹かれ合っていく。しかしその正体は――。
ラナジュリア
マルラード王国第一王女。ブリンディルの王太子の婚約者候補ということからブリンディル側でもよく記事に取り上げられている。記事によれば相当な女狐であるらしいが……。
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関連書籍
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蜂蜜記者と珈琲騎士 ブリンディル王国事件録鉄道事業に力を注ぐ技術先進国のブリンディル王国。
伯爵令嬢のミレニエは、一人前の新聞記者になるという夢を叶えるためゴーディン新聞社で働いていた。社長のダニエルから「1年以内に一面を飾る記事を書かなければ自分と結婚してもらう」と半ば脅しのように契約を結ばされたミレニエは、迫る期限に焦っていた。
そんな中、ミレニエは隣国から王女ラナジュリアが来訪するという情報を耳にし、一面記事のチャンスをつかむため取材に向かう。そこで出会ったのは、近衛騎士として王女の護衛をつとめる、珈琲色の髪と瞳を持つ凛々しい青年・カイルだった。彼に警戒されながらもなんとかラナジュリアへの取材を取り付けたミレニエは、「女狐」と称され偏見まみれの描かれ方をされてきたラナジュリアの真の姿を知っていくことに。
しかし同時に、ラナジュリアを狙う不穏な陰謀に巻き込まれ、ミレニエはカイルとともに捜査することになり……!
女性が仕事に就くことが難しい時代に、夢を叶えるため奮闘する、新米記者の恋と仕事の物語。発売日: 2025/07/25角川文庫 キャラクター文芸